
眼瞼下垂の手術を検討していても、「まぶたに傷跡が残ってしまうの?」という疑問やためらいを持つ方がいるのではないでしょうか。
しかし、まぶたの皮膚は人体の中でもきれいに治りやすい部分です。適切なダウンタイム対策やアフターケアを行えば、傷跡は時間とともに目立たなくなることが多いため、心配しすぎる必要はありません。
傷跡が目立たなくなる理由やケア方法を知っておけば、手術に対して前向きな気持ちを持ちやすくなるでしょう。
この記事では、眼瞼下垂手術後の傷跡の変化やケアのポイント、傷跡ケア用クリームを使う際の注意点などについて紹介します。術後の傷跡について悩みのある方は、ぜひ参考にしてください。
眼瞼下垂手術後の傷跡は目立つ?
眼瞼下垂の手術は上まぶたを切開するため、どうしても傷跡ができますが、通常は時間が経過すれば目立たなくなります。
ここでは、傷跡の位置や見え方や目立たなくなる理由、傷跡の変化などについて紹介します。
傷跡ができる位置や見え方
一般的な眼瞼下垂手術では、上まぶたの皮膚を切開して筋膜を瞼板に固定します。そのため、切開した部分に傷跡が生じます。
ただし、傷跡の位置は二重まぶたのライン(まぶたの折り目)に沿うため、目を開けている状態の場合、傷跡は二重ラインに隠れてほとんど見えなくなります。まぶたの皮膚は薄く柔らかいため治癒力が高く、適切に縫合されれば目立つような傷が残るケースは少ないといえます。
手術に対して不安のある方は、医師に相談して過去に手がけた症例を見せてもらう方法もおすすめです。
時間とともに目立たなくなる
術後の傷跡は時間の経過とともに少しずつ薄れていきます。
切開直後は赤みや腫れがあり、傷跡が目立つような気がすることもありますが、1〜2か月ほどで腫れや赤みが落ち着き、3〜6か月ほども経てば傷跡はほとんど気にならない状態になるでしょう。個人差はありますが、その後も半年から1年ほどかけて傷跡はより肌色に近づき、柔らかくなっていきます。
傷跡が完全になくなるわけではありませんが、時間の経過とともに周囲の皮膚になじんでいくことが通常です。
傷跡が残りやすい体質や生活習慣
傷跡の残りやすさは、体質や生活習慣の違いによって個人差が生じることが多いです。
例えば、ケロイド体質の人は傷が盛り上がって赤く残る「肥厚性瘢痕」やケロイドが生じやすい傾向があります。過去にほかの部位でケロイドを経験したことがある方は、担当医にその旨を伝えておくとよいでしょう。
糖尿病などの持病や喫煙習慣のある方は、傷の治りが遅く、瘢痕が残りやすい可能性があります。
喫煙は血流を低下させ、傷の治癒を妨げるため、手術前後は禁煙がおすすめです。
傷が広がったり硬くなるのはどんな時か
眼瞼下垂手術の傷跡は、まれに傷跡が硬く盛り上がったり、赤みが長引いたりする場合があります。
これは前述の肥厚性瘢痕やケロイドが生じた状態で、傷が治る過程で炎症が起こり、線維芽細胞が過剰に増殖することが原因です。
具体的には以下のような状態です。
- 傷口が感染を起こしている
- 傷に物理的な刺激や強い力が頻繁に加わっている
例えば、術後間もない傷口に細菌が入って化膿すると、治癒が遅延して傷跡が広がったり残りやすくなったりします。
同様に、術後に激しい運動や過度なまばたきで傷口が引っ張られたり、無意識にこすってしまう状況が続くと、炎症が長引いて瘢痕が肥厚化するリスクが高くなります。心当たりのある方は生活習慣やクセを見直してみるのもおすすめです。
傷跡を目立たせないためのダウンタイム対策
眼瞼下垂手術後、腫れや内出血が落ち着くまでのダウンタイムをどう過ごすかによって、その後の傷跡の落ち着き方が変わることがあります。
ここでは、術後のダウンタイム中にできる傷跡対策や、悪化を防ぐコツなどについて紹介します。
手術直後の腫れや赤みの対処法
術後は冷却と安静を意識して、初期の炎症をしっかり抑えることが傷跡対策に欠かせません。
術後当日は安静に過ごし、保冷剤(アイスパック)などを使って患部を冷やし、腫れを抑えることが基本です。腫れが出てからでは効果が薄いため、手術直後から早めにクーリングを行いましょう。
このほか、痛みに対しては医師から処方された鎮痛剤を適切に服用してください。処方薬の痛み止めを使えば、術後数日の痛みが和らぎます。
また、痛みを我慢しすぎるとストレスで血圧が上がり、腫れが悪化する可能性もあります。痛みが強い場合は無理せず薬に頼り、リラックスして過ごしてください。
ダウンタイム中に避けたい行動や生活習慣
術後の傷跡をできるだけ目立たせないようにするには、ダウンタイム中、傷に悪影響を与える行動を避けることが重要です。
以下に、ダウンタイム期間(主に術後1〜2週間程度)に控えるべき行動や習慣をまとめました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 激しい運動や入浴 |
血行が促進され、まぶたの腫れや内出血を悪化させる可能性がある。 手術直後は控え、再開は医師の指示を守る。 |
| 飲酒 |
アルコールの血管拡張効果による血流促進で腫れ・出血を長引かせる可能性がある。 ダウンタイム中は避けることを推奨。 |
| 喫煙 |
傷の治癒を遅らせる可能性がある。 ダウンタイム中は避けることを推奨。 |
| 目元に刺激を与える行為 |
患部をこすったり触ったりしない。 物理的な刺激で炎症が長引き、赤みや色素沈着の原因に。 |
| コンタクトレンズ・アイメイク |
傷口への負担になりやすい。 医師と相談し、適切なタイミングで再開を推奨。 |
このほかにも、睡眠不足やストレスも傷の治りを妨げやすくなります。
ダウンタイム中はなるべく規則正しい生活を心がけ、リラックスしながら休養を取りましょう。
ダウンタイム期間中に起こりやすい変化
眼瞼下垂手術の術後には、腫れ以外にも一時的に体調や見た目の変化が生じることがあります。
以下に、代表的な術後症状と落ち着くまでの一般的な期間をまとめました。
| 症状 | 落ち着くまでの一般的な期間 |
|---|---|
| ドライアイ | 約1か月~半年 |
| 異物感(目のごろつき) | 約1~2週間 |
| まぶたの閉じにくさ | 約1か月 |
| 左右の大きさ・見た目の違い | 約3〜6か月 |
いずれの症状も時間が経過すれば改善されることが多いですが、あまりにも違和感が強いと感じたり、不安を持ったりするような状態の場合には、手術をした医療機関で相談してください。
傷跡を悪化させないためには?
ダウンタイム中の傷跡ケアは回復の早さに影響することがあるため、可能な範囲で取り入れましょう。
主に以下のようなケアがおすすめです。
- 傷口を清潔に保つ
- 物理的刺激を避ける
- 紫外線を避ける
- 保湿を心がける
- 処方薬を正しく服用・使用する
このようなポイントを守ることで、傷跡がきれいに治る可能性が高まります。
万が一ケア中に「赤みが増してきた」「かゆみが出てきた」「硬く盛り上がってきた」といった変化があれば早めに医師に連絡しましょう。その際は受診までの間も患部を清潔に保ち、刺激を与えないように注意してください。
眼瞼下垂手術で傷跡を目立たせないアフターケア
術後の傷跡をきれいに治すためには、ダウンタイム直後だけでなく長期的なアフターケアも欠かせません。
ここでは、眼瞼下垂手術後の具体的なアフターケア方法や定期検診の重要性について紹介します。
冷却・圧迫の工夫
腫れを引かせ傷跡をきれいに治すためには、適切な冷却と必要に応じた圧迫が効果的です。
手術直後から48時間程度は患部を冷やしましょう。一度に長時間冷やしすぎず、10〜15分冷却したら少し休むといった形で行い、凍傷を防いでください。
また、必要以上の圧迫は逆効果ですが、出血が気になる場合には清潔なガーゼで軽く患部を押さえて止血したり、腫れを軽減したりしましょう。ただし、強く押しすぎないことが肝心です。まぶたは優しく当てる程度の圧でも十分効果が期待できます。
紫外線・刺激物・洗顔などの注意点
紫外線は色素沈着を起こす原因になるため、念入りな対策をおすすめします。
具体的には以下のような方法を意識してください。
- 外出時は帽子やサングラスを着用
- 傷周辺の皮膚には日焼け止めクリームを塗布
- 日傘などの遮光アイテムを取り入れる
日焼け止めは傷口が完全に閉じてから使用し、刺激の少ないものを選びましょう。
また、傷が治りかけの時期に刺激の強い化粧品やスキンケア商品を使わないことも重要です。アルコールや香料の強い化粧水、美容液などは傷跡にしみたり炎症を起こしたりする可能性があるため、傷が治るまでは低刺激性のものを使いましょう。
保湿アイテムや処方薬を使う
傷口がふさがり、抜糸が終わった後は、傷跡を柔らかく、目立たなくするために保湿ケアを取り入れましょう。
多くの場合で傷の状態に応じた軟膏やクリームが処方されるため、適切な頻度で使ってください。
また、術後の経過に応じて止血・抗炎症作用などの効果がある内服薬が処方されることもあります。こちらも医師の指示通りに服用しましょう。
長期的に気をつけたいケアと通院の重要性
術後半年〜1年くらいかけて傷跡がきれいになるまでは、引き続き経過に応じたケアと経過観察が必要です。
例えば、紫外線対策や保湿といった基本的なケアは、少なくとも術後半年間は継続しましょう。紫外線対策は夏場だけではなく、1年を通して続けることをおすすめします。
また、定期的な通院で経過観察をすることも大切です。術後1週間前後で抜糸を行った後も、1か月、3か月など、医師が指示するタイミングでチェックを受けてください。医師は傷跡の赤み具合や盛り上がりなどを観察し、必要に応じて追加の治療を提案することもあります。
眼瞼下垂手術の傷跡にクリームを使う時の注意
「傷跡専用のクリームや塗り薬を使いたい」と考える方もいるかもしれません。しかし、目元のデリケートな部分にクリームを使用する際には十分な注意が必要です。
ここでは、市販薬と処方薬の違いや、クリーム使用時のポイント、トラブル時の対処などについて紹介します。
市販のクリームや塗り薬は避ける
市販の傷跡ケア用クリームや軟膏は、目元の使用に適していないことがあるため、自己判断での使用を避けましょう。
成分によっては刺激になったりアレルギーを起こしたりする可能性があり、傷跡に悪影響が出る恐れがあります。使用したい市販の製品がある場合には、先に必ず医師に相談しましょう。
医師が処方する傷跡クリームを使う
医師は傷跡の状態や患者さんの肌質を考慮して、適切な薬剤を処方します。術後のケアには医師が処方した傷跡クリームや薬を使うことをおすすめします。
以下に、医療機関で処方・使用される主な傷跡クリームや治療薬の例をまとめました。
| 治療薬 | 期待できる効果 |
|---|---|
| ヘパリン類似物質の保湿クリーム | 傷跡周辺の皮膚を柔らかく保つ |
| ステロイド外用薬(軟膏・テープ) | 肥厚性瘢痕の予防・治療 |
| 瘢痕治療用の内服薬 | 瘢痕の原因になる肥厚性瘢痕の線維芽細胞増殖を抑制 |
このほか、塗り薬やテープ、内服薬などとは異なりますが、傷跡が盛り上がって硬くなってしまったりケロイドになったりした場合には、ステロイドの局所注射が行われることもあります。
肌トラブルがあればすぐに相談を
傷跡にクリームや薬を使っている間に肌に異常を感じた場合には、速やかに医師へ相談してください。
例えば、塗り薬を塗った部分に赤み・かゆみ・かぶれの症状が現れた場合、何らかの成分に対するアレルギー反応の可能性もあります。自己判断で続けると症状が悪化しかねないため、使用を中止して早めに受診しましょう。
医師に伝える際は、使用していたクリームの名称や症状の出た経緯を詳しく説明します。定期受診の際にも、些細なことでも遠慮せずに申し出ることが大事です。
例えば「少し痒いけど我慢できるから言わないでいいか」と放置した場合、悪化する恐れもあります。「何だか変だな」と思ったら、どんなに小さなことでも必ず医師に伝えてください。
まとめ
眼瞼下垂手術による傷は多くの場合、3〜6か月ほどで目を閉じてもほとんど分からない程度にきれいになります。
傷跡が気になる間のダウンタイムは、冷却や安静によって腫れ・内出血を抑え、生活習慣に注意して過ごすことが大切です。術後の注意点を守りながらケアと通院を続ければ、時間の経過とともに傷跡は目立たなくなるでしょう。クリームなどの使用も含め、医師の指示を守りながらケアを続けてください。
医療法人まぶたラボ ひふみるクリニックでは、術後の傷跡が気になる患者様に対して丁寧なカウンセリングを行っています。
ご納得いただいた上で治療を進め、満足できる結果を目指すため、形成外科専門医やスタッフが、患者様のご不安や疑問にすべてお答えします。傷跡の回復期間や処方薬、アフターケアなど、気になることは何でもご相談ください。


