
普段から原因不明の頭痛や肩こりに悩んでいる人は、もしかすると眼瞼下垂が原因かもしれません。眼瞼下垂になるとまぶたが下がって視界が狭くなり、無意識に額の筋肉を使って目を開こうとするため、頭痛や肩こりなどの症状を引き起こすことがあります。
そのような頭痛の改善には、形成外科などの専門医による眼瞼下垂の治療が必要です。眼瞼下垂と頭痛の関係や一般的な頭痛との見分け方などを知っていると、受診のタイミングが分かりやすくなるでしょう。
この記事では、眼瞼下垂で頭痛が起こるメカニズムや見分け方、治療による症状改善の可能性について紹介します。眼瞼下垂が原因かもしれない頭痛に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
眼瞼下垂によって頭痛が起こる理由
眼瞼下垂が原因で頭痛が起こる原因には、まぶたを支える筋肉や神経の問題があります。
ここでは、眼瞼下垂で生じる頭痛や、それ以外の症状について紹介します。
眼瞼下垂とは?
眼瞼下垂とは、上まぶたを引き上げる筋肉(眼瞼挙筋など)の働きが低下し、まぶたが十分に開かなくなる状態です。
以下のような症状がよく見られます。
- 上まぶたが黒目の一部にかかって視野が狭く感じる
- まぶたが重い
- 目が開けづらい など
眼瞼下垂には、生まれつき筋肉の機能が弱い先天性眼瞼下垂と、加齢やコンタクトレンズ長期使用などで筋肉を支える腱膜がゆるむ後天性眼瞼下垂があります。先天性、後天性ともに手術による根本的な治療が可能なため、異変を感じたら早めに医療機関を受診し、早期治療で進行を防ぐことが望ましいです。
額の筋肉が緊張し続けることで頭痛につながる
眼瞼下垂では視界が狭く見えにくいため、無意識のうちに額の筋肉を使ってまぶたを持ち上げようとしてしまいます。
このような動作により、額や首、肩の筋肉まで常に緊張した状態になり、筋緊張性の頭痛や肩こりが引き起こされます。
眼瞼下垂による頭痛は慢性的で長く続く傾向がありますが、原因がまぶたにあることに気づかないと、一般的な頭痛や片頭痛と勘違いしてしまい、適切な治療が始められません。「内科に行っても頭痛が改善しない」「肩こりもひどい」など、心当たりのある方は、眼瞼下垂の検査をしてみることをおすすめします。
眼瞼下垂による頭痛以外の症状
眼瞼下垂があると、頭痛以外にも眼精疲労や肩こりなどさまざまな症状が現れることがあります。
まぶたが下がって視界が遮られるため、物を見る際に必要以上に目を見開こうとして目の周りの筋肉に力が入り、目の奥の疲労感や痛みを感じやすくなります。また、視界を確保しようと顎を上げる姿勢が癖になるため、首や肩の筋肉にも負担がかかり、慢性的な肩こり・首こりが生じやすいです。
そのほか、以下のような症状も見られます。
- めまい
- 吐き気
- 耳鳴り
- まぶた周囲の筋肉の痙攣
- 歯ぎしりや食いしばり など
このように、眼瞼下垂は単にまぶたが下がるだけの病気ではなく、全身の不調につながる可能性があるため、「まぶたが下がったかも」と感じたら早めの受診を検討しましょう。
肩こり・眼精疲労が頭痛を悪化させることも
眼瞼下垂が引き起こす肩こりや眼精疲労は、頭痛を悪化させる原因です。
肩や首の筋肉の過緊張による肩こりが強まると、首筋から後頭部にかけて重だるい痛みや圧迫感が生じ、それが頭痛を起こしたり悪化させたりします。また、長時間にわたる眼精疲労は目の奥の痛みや額の重さを感じさせ、緊張型頭痛の症状をさらに強くすることもあります。
このように、眼瞼下垂による肩こり・眼精疲労と頭痛はお互いに悪影響を及ぼしやすい関係です。しかし治療する方法がないわけではありません。眼瞼下垂の治療で根本原因を取り除くことにより、それぞれの改善が期待できます。
眼瞼下垂による頭痛かどうかを見分けるポイント
頭痛を感じた時に「眼瞼下垂が原因?それとも別の病気?」と迷う方もいるかもしれません。
ここでは、眼瞼下垂による頭痛かどうかを見分けるポイントについて紹介します。
まぶたの開き具合と眉毛の位置を確認
最初にチェックしたいのは、黒目とまぶたの位置と眉毛の状態です。
鏡を見た時、黒目の上端がまぶたに1/3以上隠れている場合は、眼瞼下垂が疑われます。
次に、眉毛の位置にも注目しましょう。普段から額に力を入れて眉毛を吊り上げる癖がついている場合、眉と目の間の距離が広がり、額にシワが寄りやすくなります。鏡の前で一度リラックスして眉を下げ、まぶたがどの程度下がるかを確認すると分かりやすいでしょう。
眉毛を下げた途端に視界が狭く感じたり瞳孔が半分近く隠れてしまうようなら、額の力でまぶたを補っていた証拠で、眼瞼下垂の可能性が高いです。
額のシワや表情筋の疲れに注目
平常時にもおでこに横ジワがくっきり入っている方は、まぶたを開けるために常に前頭筋を使っている可能性があります。本来、リラックスしている時であれば額にシワは寄りませんが、眼瞼下垂の方は無意識に眉毛を上げ続けているため、おでこのシワが消えにくくなります。
同時に、表情筋(額や眉の筋肉)の疲労感が以下のようであるかも注目しましょう。
- 夕方になると額がだるく重い
- 眉のあたりが疲れて痛む、こりを感じる など
眼瞼下垂がある人は額・眉周りの筋肉を常用しているため、筋肉疲労による鈍い痛みやコリを感じやすく、それが頭痛を引き起こす原因になります。
午後から夕方にかけて頭痛が強くなる傾向
朝よりも午後から夕方にかけて頭痛がひどくなる場合は、眼瞼下垂が関係している可能性があります。眼瞼下垂による頭痛は、日中に蓄積する筋肉疲労と眼精疲労が原因であることが多く、時間の経過とともに痛みが増すことも多いです。
一方、典型的な片頭痛は午前中から痛み出すこともあり、脈打つような痛みや吐き気、光に対する過敏さなどが代表的な症状です。
「夕方になると決まって頭痛が出る」「夜になると目を開けているのが辛くなる」などの実感が続く場合には眼瞼下垂による頭痛も疑われるでしょう。
緊張型頭痛との違い
眼瞼下垂による頭痛は、症状だけに注目すれば一般的な緊張型頭痛とよく似ていますが、原因を比較するとその違いが分かりやすいです。
通常の緊張型頭痛は長時間のデスクワークやストレスなどによる姿勢不良・精神的緊張が主な引き金です。一方、眼瞼下垂による頭痛はまぶたを持ち上げるための筋肉の過緊張が引き金になっています。
つまり、眼瞼下垂がある人の頭痛は「目を見開こうとして顔の筋肉がこわばることにより生じる緊張型頭痛」であり、その点が一般的な緊張型頭痛との違いだといえるでしょう。
眼瞼下垂の治療で頭痛は改善される?
眼瞼下垂による頭痛や肩こり、眼精疲労などは、原因になっているまぶたの下垂を治療することで改善が期待できます。
ここでは、眼瞼下垂の治療によって頭痛が軽減する可能性や、手術の保険適用、術後などについて紹介します。
頭痛の改善効果を示すデータがある
眼瞼下垂の手術によって頭痛が改善することは、いくつかの調査や研究で報告されています。
眼瞼下垂の手術を受けた患者さんのうち、術前に頭痛があった30人全員が、術後に頭痛の程度が半分以下に軽減したと回答しています。そのうち18人(60%)は「頭痛がまったく無くなった」と回答しました。肩こりも、46人中半数以上が「完全になくなった」もしくは「かなり軽減した」と回答しています。
また、海外の研究では、眼瞼下垂の手術前後で頭痛の影響度(HIT-6スコア)を比較しました。その結果、平均スコアが術前の60.0点から術後は42.3点まで低下し、日常生活への頭痛の支障がほとんど無いレベルに改善したという結果も出ています。
(参考:Association of Upper Eyelid Ptosis Repair and Blepharoplasty With Headache-Related Quality of Life)
頭痛の改善度には個人差があり、必ず全員がまったく影響を感じなくなるというわけではありません。しかし、眼瞼下垂手術が症状を改善させる可能性が高い治療方法であることは間違いないでしょう。
肩こり・眼精疲労も改善する可能性
眼瞼下垂の治療によって得られるメリットは、頭痛だけではなく、肩・首のこり、眼精疲労の改善や、睡眠の質の向上なども挙げられます。
まぶたを手術で持ち上げることで、これまで過度に緊張していた肩や首の筋肉がリラックスし、肩こりや首こりの改善も期待できます。手術によって額の筋肉にかかる過剰な負担が減るため、眼精疲労の軽減も期待できるでしょう。
また、眼瞼下垂が改善することで「視界が明るくなり気分も前向きになった」「夜ぐっすり眠れるようになった」という報告もあります。これは頭痛や筋肉の緊張が取れたことで睡眠の質が向上し、結果的に日中の疲労も減ったためと考えられます。
眼瞼下垂からのさまざまな症状に悩んでいる人にとって、手術による根本治療はQOL(生活の質)向上の大きな一歩になるでしょう。
保険適用になるケースと自己負担について
眼瞼下垂の手術はケースによって健康保険が適用されます。
一般的には、視野障害や症状が日常生活に支障をきたしている場合には「機能改善のための治療」と認められ、保険診療の対象です。
具体的には以下のような場合です。
- まぶたが下がって視野が遮られている
- 眼瞼下垂のために慢性的な頭痛や肩こりが悪化している など
一方、症状や機能障害が理由ではなく、「二重の幅を広げたい」「見た目を若返らせたい」といった美容目的の場合は、自由診療で全額負担になります。
費用面については、保険診療で手術を受ける場合、費用は全国一律の診療報酬点数で計算されます。
以下に参考として、当院・医療法人まぶたラボ ひふみるクリニックで眼瞼下垂の保険適用手術をした場合の費用(自己負担分)をまとめました。
| 範囲 | 負担割合1割 | 負担割合3割 |
|---|---|---|
| 両目 | 1万6,000円 | 4万8,000円 |
| 片目 | 9,000円 | 2万7,000円 |
一方、自由診療(美容目的)の場合はクリニックごとに料金設定が異なり、両目で数十万円(税込)程度の費用がかかることもあります。
治療後も症状が残る場合に考えられること
眼瞼下垂の手術を受けたにもかかわらず、もし頭痛や肩こりが残ってしまう場合は、眼瞼下垂以外の原因が隠れている可能性があります。
慢性頭痛には、緊張型頭痛のほかにも片頭痛や頚椎由来の頭痛など複数のタイプがあり、1人の患者さんが複数の要因を抱えていることもあります。眼瞼下垂を治療して額の筋緊張が改善しても、例えば姿勢不良やストレスによる緊張が残っていれば、頭痛も完全には消えないこともあるでしょう。
また、もともとの頭痛が体質によるものだった場合、眼瞼下垂の改善だけでは十分な効果が得られないケースもあります。
そのため、術後も頭痛が続く場合は神経内科や頭痛外来など、ほかの診療科で専門的な診察を受けることも検討してください。
眼瞼下垂の手術の種類
眼瞼下垂の根本治療は基本的に手術によって行いますが、術式にはいくつかの種類があり、患者さんの眼瞼下垂の原因や程度、まぶたの構造などに応じて医師が適切な術式を選択します。
以下は実際に当院・医療法人まぶたラボ ひふみるクリニックで手がけている、眼瞼下垂の根本的な治療が期待できる術式です。
| 手術法 | 内容 |
|---|---|
| 挙筋前転法 | 挙筋腱膜が瞼から外れている場合に、挙筋腱膜をまぶたに縫合し直す術式。 |
| 挙筋短縮法 | 眼瞼挙筋の切除・固定する術式で、重度の眼瞼下垂での選択が多い。 |
| 上眼瞼切開法(皮膚切除) | 弛緩した上まぶたの皮膚を切除・調整で症状の改善を図る術式。 |
| 筋膜移植法(前頭筋吊り上げ術) | 大腿筋膜を移植し、額の筋肉(前頭筋)とまぶたをつなぐ術式。 |
| 眉下切開 | まぶたには手を加えず、眉毛の下を切開してたるみを取り除く術式。 |
このほかの術式としていわゆる「切らない手術」も知られていますが、十分な改善効果が期待できないケースもあるため、まずは医師とよく相談してください。
まとめ
眼瞼下垂によって額や首・肩の筋肉が常に緊張すると、慢性的な緊張型頭痛が引き起こされ、生活の質に影響を与えやすくなります。
眼瞼下垂が原因であれば、手術治療によって症状が改善する可能性が高く、多くの改善例が報告されています。症状が強い場合は健康保険で治療できることも多いため、原因不明の頭痛や肩こりでお悩みの方は、眼瞼下垂について診察を受けてみてはいかがでしょうか。
医療法人まぶたラボ ひふみるクリニックでは、眼瞼下垂に起因する頭痛や肩こり、眼精疲労などのお悩みをご相談いただけます。
形成外科専門医による診察で原因を特定し、必要であれば適切な術式による眼瞼下垂手術も可能です。日帰り手術にも対応しているため、忙しい患者様にも手術を受けていただきやすくなっています。眼瞼下垂が原因だと思われる症状でお悩みの方は、お早めに当院でご相談ください。


