
まぶたが垂れ下がる眼瞼下垂(がんけんかすい)の治療に、眉下切開と眼瞼下垂手術のどちらがよいか迷う方もいるかもしれません。
通常は症状に適した方法を医師が判断し提案しますが、該当する症状や、どのような方におすすめなのか、意識しておきたいポイントなど、治療を受ける本人が知っておくとよいでしょう。
この記事では、眉下切開と眼瞼下垂手術の違いやメリット・デメリット、向いているケース、向いていないケース、意識しておきたいことなどについてわかりやすく紹介します。眼瞼下垂の症状に悩み、眉下切開と眼瞼下垂手術のどちらが向いているのか知りたい方はぜひ参考にしてください。
眉下切開とは?
眉下切開は、上まぶたのたるみを取り除く美容手術です。
ここでは、眉下切開の基本的な手術内容や適応になる症状、メリットやダウンタイムなどについて紹介します。
眉下切開の基本的な手術内容
眉下切開は、上まぶたの余分な皮膚を眉毛直下から切除することでたるみを改善する手術です。
皮膚だけではなく、内部の余分な筋肉や脂肪も必要に応じて除去し、日帰りで手術が可能です。切開線は眉下のラインに沿うため、傷跡は眉毛に隠れて目立ちにくく、術後に眉毛の位置や目の形が大きく変わる心配もほぼありません。
たるみによって狭くなっていた二重の幅が自然に広がり、すっきりとした仕上がりが期待できることが特徴です。
どのような悩みに適応される手術か
眉下切開は、主に加齢による上まぶたのたるみに悩む場合に適した手術です。
例えば、以下のような症状がある場合には眉下切開がすすめられることがあります。
- 加齢でまぶたが垂れ下がり、視界が狭くなった
- まぶたが厚ぼったく、重たい印象になる など
まぶたを開く筋肉に問題がなく、皮膚のたるみだけが原因のケースでは、眉下切開で余分な皮膚を除去することによって症状の改善が期待できるケースもあります。
眉毛下からアプローチする利点とは
眉下切開ではまぶたではなく眉の下の皮膚からアプローチするため、術後の傷跡を眉毛に隠しやすいという利点があります。
切開部位が眉毛付近に限定され、上まぶた自体に直接メスを入れることはありません。
そのため、術後に眉の位置や目の形が変わる心配が少なく、全体として自然な仕上がりになりやすい手術です。
傷跡やダウンタイムなど
眉下切開の場合、個人差はありますが、術後の腫れは翌日がピークで約1週間で落ち着くことが一般的です。抜糸はその後になります。
ダウンタイムが比較的短く、日常生活への影響が少ない点も眉下切開の特徴です。内出血が出た場合も1〜2週間程度で吸収されることがほとんどです。
傷跡は眉毛のラインに沿っており、目立ちにくく、患部以外の部分は翌日からメイクすることも可能です。
眼瞼下垂手術との違いと同時手術について
まぶたの下がりを治療する方法には、眉下切開のほか、眼瞼下垂手術があります。
ここでは、眉下切開と眼瞼下垂手術の違いや、両方を同時に行うケースなどについて紹介します。
眼瞼下垂手術とは?
眼瞼下垂手術は、上まぶたを持ち上げる筋肉(眼瞼挙筋)の緩みによってまぶたが下がる症状を改善するための手術です。
挙筋やその腱膜を縫い縮めて調整することで、まぶたの位置を正常に戻し、まぶたで狭くなっていた視界を広げられるようになります。
術後は眠そうに見えていた重いまぶたが縦に大きく開き、目元が若々しく改善する美容的な効果も期待できます。
眉下切開と眼瞼下垂手術の違い
眉下切開と眼瞼下垂手術には、切開位置と機能面のアプローチ部分に違いがあります。
眉下切開では眉毛直下を切開しますが、眼瞼下垂手術では通常まぶたの二重ラインに沿って切開を行います。そのため、眉下切開は術後の傷が眉毛に隠れて目立ちにくくなることが多いのに対し、眼瞼下垂手術の場合、時間が経てば改善しますが、手術直後はまぶた上の傷跡が見えやすい状態です。
また、機能面でアプローチする部分にも違いがあります。眉下切開は上まぶたの余分な皮膚を除去することで視界を妨げていたたるみを解消し、狭くなっていた二重幅を元に戻す効果があります。
一方、眼瞼下垂手術は低下した筋肉の働きを直接改善する手術です。まぶたの開き自体が向上し、視野が広がるとともに、眼瞼下垂が原因で起きていた肩こり・眼精疲労などの症状改善も期待できます。
眉下切開との同時手術は可能?
症状や希望によっては、眉下切開と眼瞼下垂手術を組み合わせることでより効果的な結果が得られる場合があります。
しかし、症状は患者さん1人ひとりで違い、適切な方法は症例によって異なります。
また、同時に行うことで術後の腫れや負担も大きくなる可能性が高いため、同時手術が適しているかどうかは、医師とよく相談する必要があるでしょう。
眉下切開と眼瞼下垂手術はどっちがおすすめ?
眉下切開と眼瞼下垂手術のどちらが適しているかは、患者さんの症状や希望によって異なります。
まぶたの開き自体に問題がなく、皮膚のたるみが主な原因であれば、眉下切開によって余分な皮膚を取り除くことが多いです。一方、瞼を持ち上げる筋肉の機能低下があり、中等度~重度の眼瞼下垂が見られる場合には、眼瞼下垂手術で根本的にまぶたを持ち上げる治療が適しています。
症状が軽度か重度かは検査結果などから医師が総合的に判断しますが、迷った場合は形成外科の専門医に相談して、適切な治療法の提案を受けましょう。
眉下切開が向いている人
眼瞼下垂の症状が比較的軽度で、皮膚のたるみが主な原因の場合や患者さんの希望によって、眉下切開が選ばれることがあります。
ここでは、どのような人が眉下切開に適しているかについて紹介します。
眼瞼下垂が軽度の人
眉下切開はまぶたの下がり具合が比較的軽度な場合に選択されます。
また、以下のような条件を満たしていれば、眉下切開をすすめられることも多いです。
- 挙筋の機能は保たれている
- 上まぶたの皮膚が余って垂れている
このような場合は眉下切開による改善が適しています。
軽度の眼瞼下垂であれば筋肉に手を加えず皮膚のたるみを取るだけで視界が開けるため、必要以上に目元の印象を変えずに症状を解消しやすいでしょう。
二重ラインを変えずにたるみだけ取りたい人
もともとの二重ラインを維持しながら、上まぶたのたるみだけを取り除きたい人にも、眉下切開がおすすめです。
眉毛下の皮膚を切除する眉下切開では、二重まぶたのラインに傷を入れないため、術後も二重幅や形がほぼそのまま保たれます。
たるみによって隠れていた本来の二重が自然に復活するため、パッチリ感が増しても人工的な印象になりにくい点もメリットです。
傷跡を眉の下に自然に隠したい人
手術の傷跡が目立つのが心配な人にも、眉下切開は向いています。切開線が眉のすぐ下に位置するため、傷跡は眉毛に紛れて術後も目立ちにくくなります。
上まぶたの二重ライン上に傷ができる眼瞼下垂手術と比べても、周囲に手術痕を気づかれにくい方法です。
手術後も顔の印象を大きく変えたくない人
術後に目元の印象を大きく変えたくない人にも、眉下切開が適しています。眉下切開は眉毛下の皮膚を適度に取り除くのみのため、目の開きや眉の位置は変わらず、自然な変化にとどまります。
一方、眼瞼下垂手術ではまぶたの開き具合が眉下切開よりも変化するため、人によっては術後に「目元の印象が一変した」と違和感を持つ可能性もあるでしょう。
眼瞼下垂も優れた手術法ですが、より自然な仕上がりを望むのであれば眉下切開を選ぶのもおすすめです。
眼瞼下垂手術が向いている人
中等度〜重度の眼瞼下垂で目が開けづらくなっている方、視界不良に伴い肩こりや頭痛などの症状が出ている方は、眼瞼下垂手術のほうがよい場合があります。
ここでは、眼瞼下垂手術が適している人について紹介します。
眼瞼下垂が中度~重度の人
まぶたがはっきりと下がって瞳孔にかかる中等度〜重度の眼瞼下垂がある人は、眼瞼下垂手術による根本治療が適しています。
上まつ毛の生え際が覆われて視野が狭くなるほどの症状であれば、機能改善目的の治療として保険が適用されるケースが多いです。
重度の症状でも視界障害が改善され、肩こりや眼精疲労などの不調も軽減することが多く、生活の質(QOL)の向上が期待できます。
目の開きをよくしたい人
まぶたを大きく開けてパッチリした目元にしたい人にも、眼瞼下垂手術が適しています。
挙筋を調整してまぶたを持ち上げることにより、眠そうに見えていた目が縦に大きく開き、若々しい印象の力強い目元に改善できます。
加齢でまぶたが重くなり、目が開きにくいと感じている人にとっても、有効な治療方法です。
眼瞼下垂が原因でほかの症状が出ている人
まぶたが下がることで視野が狭くなり、額に力を入れて目を見開こうとする状態が続くと、頭痛や肩こりなどの症状が出ることがあります。
眼瞼下垂手術でまぶたがしっかり開くようになることで、このような症状改善が期待できるため、症状に悩む人は眼瞼下垂手術が適しているでしょう。
保険診療を利用したい人
費用面を重視して保険適用で治療したい人も、眼瞼下垂手術が適しているケースが多いです。
厚生労働省の基準では、日常生活に支障をきたす程度の眼瞼下垂症であれば、眼瞼下垂手術に保険が適用されます。
一方、見た目の改善を目的とするまぶたのたるみ取りは保険適用外(自由診療)になるため、全額負担での治療が必要です。
手術前後に知っておくべき注意点
眉下切開でも眼瞼下垂手術でも、手術の前後には意識しておきたいポイントがあります。
ここでは、手術前後に知っておくべき注意点について紹介します。
カウンセリングで確認しておきたい項目
手術前のカウンセリングでは、不安な点や希望は遠慮せずに医師に伝え、自分に合った治療法について正しく解説してもらいましょう。
眉下切開を選ぶ場合は、取り除く皮膚の量によって仕上がりが変わるため、希望する目元の雰囲気を事前にしっかり相談することをおすすめします。
ダウンタイムや生活制限についての目安
術後のダウンタイム中は飲酒や激しい運動を控えましょう。アルコールの摂取や運動は血行を促進しやすいため、腫れや内出血が悪化する恐れがあります。特に手術から数日間は安静に過ごし、医師の許可が出るまでは激しい運動や長時間の入浴は避けるようにしてください。
メイクを再開するタイミングについても医師の指示を守りましょう。
手術後の経過観察と合併症のリスク
眉下切開と眼瞼下垂手術は、どちらも合併症のリスクがあるため、術後の経過観察とダウンタイム中のケアが重要です。
例えば、以下のような合併症リスクがあります。
| 手術法 | リスク |
|---|---|
| 眼瞼下垂手術 |
・一時的に視界がぼやける ・まぶたの開きに左右差が出る ・目の印象が変化する |
| 眉下切開 |
・傷跡が盛り上がる ・赤みが残る ・左右差が出る |
このような症状は必ず起こるわけではありませんが、術後は定期的に医師の診察を受け、少しでも気になる症状があれば早めに担当医に相談しましょう。
まぶたの悩みは形成外科で相談を
眼瞼下垂やまぶたのたるみで悩んだら、まずは形成外科や眼科の専門医に相談しましょう。
医師が詳細に診察して原因や重症度を判断し、適切な治療法の提案が可能です。まぶたの手術はデリケートなため、専門的な技術や知識、手術経験を持つ医師のもとで納得のいく治療を受けてください。
まとめ
眉下切開と眼瞼下垂手術は、上まぶたのたるみや下がりを改善する手術ですが、原因や重症度に応じて適した症状が異なります。
軽度で皮膚の余りが目立つ症状であれば、眉下切開でたるみを除去できることが多いです。しかし、まぶたの下がりが重度で筋肉機能の低下を伴う場合は、眼瞼下垂手術で根本的にまぶたを持ち上げる治療が有効になります。
どちらの手術が適しているかは、医師の診察を受けなければ正確に分からないため、まぶたの違和感に気付いたら早めに形成外科や眼科を受診しましょう。
医療法人まぶたラボ ひふみるクリニックでは、眉下切開と眼瞼下垂手術の両方に対応しています。形成外科専門医が丁寧な診察の上、患者様1人ひとりに適した手術法を提案し、症状の改善をサポートします。まぶたの違和感や眼瞼下垂の治療法にお悩みの方は、ぜひ当院でお気軽にご相談ください。


