
一般的に眼瞼下垂は中高年に多い病気ですが、近年では10代~30代の若い人にも見られるようになりました。眼瞼下垂を放置していると、見た目の印象だけではなく、日常生活に影響が出ることもあるため、気付いたら早めの受診や治療が必要です。
そのためには、若い人が眼瞼下垂になる理由や治療法などについて知っておくと役立つでしょう。
この記事では、若い人の眼瞼下垂について、原因や症状、治療法などを紹介します。放置すると生じる問題や治療時の注意点などにも触れているため、「眼瞼下垂かも?」「最近、まぶたに違和感がある」といった疑問や悩みがある方は、ぜひ参考にしてください。
若い人の眼瞼下垂で見られる原因と特徴
加齢以外にも、さまざまな原因で若い世代でも眼瞼下垂が起こり得ます。
ここでは、生まれつきまぶたを開ける筋力が弱い場合や、生活習慣による後天的な要因など、若い人に見られる眼瞼下垂の主な原因について紹介します。
先天的にまぶたを開ける筋力が弱いケース
生まれつきまぶたを持ち上げる筋肉(眼瞼挙筋)の力が弱いと、若年でも眼瞼下垂が発症します。先天性眼瞼下垂の約9割は眼瞼挙筋の発育不全が原因とされ、生まれつきまぶたが十分に上がらない状態です。
片目だけに起こることも多く、約8割が片眼性で、軽度の場合は成長するまで本人も周囲も気付かないことがあります。見た目で瞳孔が隠れるほど明らかな場合は早く発見できますが、軽度や両目均等な場合は発見が遅れやすい点には注意が必要です。
先天性でも眼瞼挙筋自体が残っていれば挙筋前転術による改善が期待できるため、症状が重くなる前に専門医へ相談しましょう。
ハードコンタクトレンズや目のこすり癖の影響
若い世代に多い後天的原因として、ハードコンタクトレンズの長期使用と、無意識な目のこすり癖が挙げられます。
ハードコンタクトレンズはレンズが厚く、瞬きのたびにまぶたを擦り、挙筋腱膜を徐々に薄く伸ばしてしまうため、眼瞼下垂のリスクになります。一方、ソフトレンズは薄く眼瞼下垂への影響は少ないと考えられますが、それでも装着・取り外し時にまぶたへ負担をかけないよう、丁寧に扱うことが重要です。
また、目をこする習慣もまぶたへの慢性的な刺激になり、眼瞼下垂の発症リスクを上げてしまいます。
スマートフォン・パソコン使用と眼精疲労
スマートフォンやパソコンの長時間使用による目の酷使も、若い人の眼瞼下垂につながる要因です。
小さな画面を凝視し続けることで眼の周りの筋肉・神経が疲労し、まぶたを支える筋力が低下する恐れがあります。
さらに、スマートフォンやゲーム機などが発するブルーライトはドライアイを招き、眼球とまぶたの間で摩擦を生じさせ、挙筋や皮膚にダメージを与えます。
このような負荷の積み重ねは、若い人でも眼瞼下垂を発症する原因のひとつです。現代ではスマホの利用時間が長く、目に大きな負担がかかりがちなため、適度に休憩を取り、画面から目を離す習慣を取り入れましょう。
見た目では分かりにくい特徴と自覚症状
若い人の眼瞼下垂は、見た目では分かりにくい軽度の症状が多いことも特徴です。
しかし、次のような自覚症状がある場合には注意が必要です。
| 症状 | 内容 |
|---|---|
| 頭痛や肩こり |
・視界を確保しようと無意識に眉や額を使う ・首や肩がこり、頭痛を感じることもある |
| 目の疲れや痛み |
・眼の奥に痛みを感じる ・夕方になるとまぶたが重くなる |
| 集中力の低下 |
・まぶたが重いため勉強や仕事に集中できない ・作業効率や成果が落ちる |
このような症状に心当たりがある若い人は、眼瞼下垂の可能性を考慮してもよいでしょう。
放置すると少しずつ悪化してしまうため、早めに医療機関での受診をおすすめします。
眼瞼下垂を放置するとどうなる?
治療せずに眼瞼下垂の症状を放置すると、日常生活への悪影響が少しずつ大きくなります。
ここでは、眼瞼下垂を放置した場合、どのような影響が出るかについて紹介します。
視界の悪さによる集中力・作業効率の低下
まぶたが下がった状態を放置すると、常に視界が狭いまま生活することになります。
視野が遮られると物を見るのに余計な労力がかかり、勉強や仕事で集中力が続かなくなったり能率が下がったりします。
表情への影響で「眠そう」「怠けているようだ」と誤解され、本人の状態や意欲が正確に理解されない恐れも生まれるでしょう。
眉や額の筋肉疲労による頭痛や肩こり
まぶたが下がったままだと、無意識のうちに額や眉の筋肉を使ってまぶたを持ち上げようとする癖がつくことが多いです。
このような癖が繰り返されると、額・眉・首・肩などの筋肉がいつも緊張し、頑固な肩こりや頭痛に悩まされる場合があります。
「原因に心当たりがないのに肩こりや頭痛が続く」といったことがあれば、眼瞼下垂の症状と照らし合わせ、確認してみるのもよいでしょう。眼瞼下垂による頭痛や肩こりは、原因であるまぶたの下垂を改善しない限り解消しにくいため、症状が慢性化する前に治療を検討してください。
外見上の印象
まぶたが下がっていると、見た目にもネガティブな印象を与えてしまう可能性があります。
若い人でも、眼瞼下垂になると「目つきが悪く見える」「いつも眠そう」といった印象を周囲に持たれやすくなってしまいます。
このような外見上の変化が本人のコンプレックスになったり、他人から誤解されて対人関係に影響したりする恐れもあるため、まぶたの違和感に気付いたら受診を検討しましょう。
眼瞼下垂が進行し悪化するリスク
眼瞼下垂は自然に治ることはなく、放っておけば加齢とともに進行する症状です。
軽症のうちは生活に支障が少なくても、時間が経過するとまぶたの下垂が進み、視界の狭まりや症状の重篤化につながってしまいます。また、放置期間が長いほど手術で修正する際の難易度が上がることも多く、治療後の回復に時間がかかる傾向があります。
逆に、早期に受診して適切な治療を行えば、比較的負担の少ない治療で症状の改善が期待できるでしょう。症状を感じたら「もう少し様子を見よう」と先延ばしにせず、早めに診察を受けてください。
若い人の眼瞼下垂に対する診断と治療法
眼瞼下垂が疑われる場合、どのような治療が行われるのでしょうか。
ここでは若い人の眼瞼下垂に対する主な検査や診断基準、治療のタイミングや適切な診療科、手術法などについて紹介します。
主な検査や診断基準
眼瞼下垂があるかどうかは、まぶたの開き具合を数値で測定して判断します。具体的には、黒目の中心(瞳孔)から上まぶたの縁までの距離を測り、2.0mm以下の場合が眼瞼下垂です。
医師はこの計測に加え、以下のような点も検査します。
- 左右差の有無
- 眼瞼挙筋の筋力(まぶたを上下させる動きの幅)
また、まぶたの下がり方によっては眼瞼痙攣(まぶたの不随意な痙攣)や皮膚弛緩による偽眼瞼下垂との鑑別も必要です。
眼瞼下垂の手術は何歳から可能?
重症度や視力への影響度によって異なりますが、必要があれば幼児でも手術は可能です。視界を遮るほどまぶたが下がり、弱視の恐れがある先天性眼瞼下垂の場合、3歳をひとつの区切りにして手術をすることが多いです。
一方、軽度の先天性や後天性の場合はその限りではなく、成長過程を見守りながら医師の判断で決定されます。
ただし成長過程や症状は1人ひとり違っており、ケースバイケースになるため、必ずしもすべての患者さんが同年齢で手術をするということではありません。
受診するなら何科?
眼瞼下垂の治療は眼科・形成外科・美容外科のいずれでも診察や手術などが可能ですが、特に形成外科(美容外科を含む)の受診がおすすめです。形成外科や美容外科はまぶたの手術において、見た目の仕上がりにも配慮した治療を行っているところが多いです。
ただし、眼科が形成外科や美容外科よりも適切ではないということではありません。まず眼科で検査を受け、必要に応じて形成外科を紹介してもらったり、形成外科でのセカンドオピニオンを選ぶ方法もあります。
なお、徹底的に見た目を重視したいという場合、保険適用の形成外科ではなく、美容外科で全額自費になる可能性があります。
費用や仕上がり、保険との関係については事前に必ず確認してください。
眼瞼下垂手術の種類
眼瞼下垂の治療は、基本的に手術によるまぶたの引き上げで行われます。
手術法にはさまざまなものがありますが、以下では当院・医療法人まぶたラボ ひふみるクリニックが手がける眼瞼下垂手術の種類を紹介します。
| 手術法 | 内容 |
|---|---|
| 挙筋前転法 | 挙筋腱膜をまぶたに縫合し直す |
| 挙筋短縮法 | 眼瞼挙筋の切除・固定 |
| 上眼瞼切開法(皮膚切除) | 上まぶたの皮膚を切除・調整 |
| 筋膜移植法(前頭筋吊り上げ術) | 額の筋肉(前頭筋)とまぶたをつなぐ |
| 眉下切開 | 眉毛の下を切開してたるみを取る |
切らずに改善を試みる治療もありますが、より効果が期待できる治療を望む患者さんや、先々の加齢による再発防止も考慮したい患者さんには、上記のような治療をおすすめします。
若い人の眼瞼下垂治療で注意すること
若い世代で眼瞼下垂の治療を受ける際には、年齢特有の心配ごともあるでしょう。
ここでは、手術後の外見変化への不安やケア、日常生活での注意点などについて紹介します。
手術後の見た目の変化に対する不安と対応
10代~30代の患者さんは、手術による外見の変化に敏感な人が多いかもしれません。患者さんによっては「周囲に整形だと誤解されるのではないか」「自分の顔らしくない」と不安を感じることもあるでしょう。
こうした不安に対処するため、手術前には十分なカウンセリングを行い、術後の仕上がりイメージを写真や症例で示しながら患者さんと共有します。
また、術後しばらくは腫れがあるため、適切なケアや通院でのフォローなど、対応についてもしっかりと説明しています。不安があればどんなに小さなことでも担当医に質問して、悩みを解消してから治療を進めましょう。
コンタクトレンズやアイメイクの再開目安
眼瞼下垂の手術後は、コンタクトレンズやアイメイクの使用再開時期に注意が必要です。
傷口の安静と感染予防のため、基本的に抜糸が終わるまではコンタクトやアイメイクは控えます。コンタクトレンズも同様に、抜糸までは装用を避けてメガネで過ごすのが原則です。
その後は医師と相談しつつ装用再開しますが、ハードコンタクトレンズは眼瞼下垂の症状を誘発しやすい性質があります。可能であればソフトコンタクトレンズや眼鏡の使用も視野に入れることをおすすめします。
生活習慣で気をつけるべき行動
眼瞼下垂の治療後は、再発予防のため生活習慣の見直しをおすすめします。
スマートフォンやパソコンの使用は適度に休憩を挟み、暗い場所での操作や長時間使用は避けましょう。
目をこする癖はできるだけ直すようにして、まぶたへの刺激を避けます。ハードコンタクトレンズをソフトや眼鏡にするのも、まぶたへの刺激を避けやすくなり、再発防止に役立ちます。
治療後の経過観察と定期受診
眼瞼下垂の術後は定期的な経過観察が重要です。日帰り手術でも、抜糸や状態確認のため、医師に指示された通りに通院してください。
手術をせず、「様子を見ましょう」と言われた場合でも、定期的な通院で状態を確認し、自己判断で放置しないようにしましょう。
若い人の眼瞼下垂についてのよくある質問
若い人の眼瞼下垂は症状が分かりにくいことも多く、治療開始時期にも影響が出てしまいかねませんが、どのような点に注意するべきでしょうか。
ここでは、若い人の眼瞼下垂でよくある質問について紹介します。
眼瞼下垂と一重との違いは?
一重まぶたはまぶたの構造上、二重の線がない状態を指す生まれつきのまぶたの形状で、美容的な特徴のひとつです。
一方、眼瞼下垂はまぶたを引き上げる筋肉(眼瞼挙筋など)の機能低下によって上まぶたが下がる医学的な症状です。
眼瞼下垂ではまぶたが垂れ下がることで視界が狭くなり、日常生活に支障をきたすことがあります。また、額や眉を使って無理に目を開けようとする結果、頭痛や肩こり、慢性的な眼精疲労など全身症状につながる点も一重まぶたとの大きな違いです。
見た目は似ていても原因や影響が異なるため、気になることがあれば形成外科を受診しましょう。
眼瞼下垂手術を受けるタイミングは?早い方がいい?
症状があるなら早めの治療が望ましいです。眼瞼下垂は放置して自然に治ることはなく、むしろ加齢とともに進行していきます。
軽いうちに対処すれば少ない矯正量で済む場合でも、悪化してからでは大きな手術が必要になることもあります。また、若いほうが傷の治りもよく回復が早いため、早期治療のメリットは大きいでしょう。
まとめ
先天性の筋力不足やコンタクトレンズ・目の摩擦など様々な要因で、加齢に関係なく若い人でも眼瞼下垂を発症することがあります。放置すれば症状が進行し、視界不良や容姿への影響が大きくなるため、早めの受診・治療がおすすめです。
治療には挙筋前転術などの手術が中心で、多くは保険適用で受けられます。
若い患者さんでは仕上がりの見た目にも配慮しつつ機能改善を図ることが重要で、形成外科など専門医による十分なカウンセリングのもと治療を進めると安心です。若いからこそ回復力も高く、治療によって得られるメリットは大きくなります。
医療法人まぶたラボ ひふみるクリニックでは、年齢が若い患者さんの眼瞼下垂についてご相談いただけます。「若いけど眼瞼下垂かも?」と感じるような違和感があれば、ぜひ当院でご相談ください。


