
眼瞼下垂の切開手術は、まぶたが下がって目を開けづらくなる症状を改善するための治療法です。上まぶたを切開して挙筋腱膜(まぶたを持ち上げる筋肉の腱)を短縮し、瞼板に固定する方法で行われます。
軽度から重度まで幅広い眼瞼下垂に対応でき、比較的効果が持続しやすい治療法とされているため、眼瞼下垂の手術を検討している方は興味を持つのではないでしょうか。
この記事では、切開法による眼瞼下垂手術の概要や特徴、ほかの手術との違い、費用面やダウンタイムなどについて紹介します。眼瞼下垂の症状に悩み、手術による治療に興味がある方はぜひ参考にしてください。
眼瞼下垂の切開手術とは
眼瞼下垂の切開手術とは、上まぶたを切開して挙筋腱膜(きょきんけんまく)を短縮し、瞼板(けんばん)に固定する手術です。まぶたの筋肉(眼瞼挙筋)を直接処置できるため、下垂したまぶたの機能を回復し、目の開きを改善します。
効果が安定しやすく、軽度から重度までさまざまな眼瞼下垂に対応できる点がメリットです。切開時に余分な皮膚や脂肪を取り除くため、まぶたの重みも解消し、すっきりとした印象の目元に整えやすくなります。
また、手術をする医師が筋膜を直接確認しながら処置するため、問題点を見逃しにくく、再発を防ぎながら機能を改善する効果が高い特徴があります。
二重切開手術・眉下切開手術との違い
眼瞼下垂の切開手術と混同されやすい手術に、二重整形の切開手術(二重切開)や眉下切開手術がありますが、それぞれ目的と作用が異なります。
二重切開はまぶたの皮膚を切開しますが、余分な脂肪を取り除いて半永久的な二重を作るための美容整形手術です。
また、眉下切開手術は、眉毛のすぐ下の皮膚を切開して余分なたるみを除去する手術で、加齢でまぶたにたるみが生じ、視界を邪魔している場合に選ばれることが多いです。眉下のラインに沿って皮膚を切り取るため、傷跡が眉毛に隠れやすく、目元の印象を自然に若返らせる効果があります。
ただし眉下切開では眼瞼挙筋そのものに作用しないため、上まぶたを持ち上げる力は改善されません。まぶたの筋力低下が原因の眼瞼下垂の改善には、やはり挙筋腱膜を直接治療する切開法の手術が必要になります。
眼瞼下垂の切開手術が検討される症状
眼瞼下垂の切開手術は、まぶたが下がることで機能的な問題が生じている場合に検討されます。
ここでは、切開法による手術が検討される具体的な症状について紹介します。
日常生活に支障が出ている
上まぶたが垂れ下がった結果、視野が狭くなり日常生活で物が見えづらくなる場合は切開手術を検討します。
例えば、以下のような状態は切開手術が向いているでしょう。
- 正面を見た時にまぶたが黒目に被さるほど下がっている
- 額の筋肉を使わないと十分に目を開けられない
このような場合、実際に眼瞼下垂手術を受けると視野障害が改善し、物が見えやすくなるため日常生活の質が向上します。
片頭痛や肩こりを招いている
まぶたが下がった状態を無理に補おうとして、無意識に額の筋肉で眉を吊り上げ続けてしまうことがあります。
これは、額から首・肩にかけて筋肉が緊張し、慢性的な頭痛や肩こりを引き起こす恐れのある状態です。実際、「額に力を入れすぎて夕方には頭痛がする」「肩や首が凝ってつらい」といった症状は、眼瞼下垂の患者さんに見られるものです。
切開による眼瞼下垂手術でまぶたの開きを改善すると、額の筋肉が過剰に緊張しなくなるため、このような肩こり・頭痛なども軽減する可能性があります。
先天性眼瞼下垂である
片目または両目のまぶたが生まれつき開きにくい「先天性眼瞼下垂」の場合も、成長に合わせて手術が検討されるケースです。
乳幼児期から瞳孔までまぶたが覆ってしまうような症例では、視力の発達を妨げ、弱視や斜視の原因になる恐れがあります。
この場合は早期の手術治療が求められることもあり、生後数年以内に手術を行って視覚の健康的な発達を促します。
審美的な悩みを解消したい
眼瞼下垂は機能面の問題だけではなく、外見上も「眠そうな目」「不機嫌そうな表情」に見えてしまう原因のひとつです。
そのため、見た目の印象改善を目的に手術を希望する人もいます。
個人差はありますが、手術によって上まぶたがしっかり開くと黒目の露出部分が増えて目元がはっきりし、左右差がある場合も改善されやすいため、顔の印象が若々しく明るくなることがあります。
ただし審美目的の場合、自由診療(自費)の扱いになり、保険が適用されません。費用が高額になるため、希望する場合は費用面も含めて慎重に検討しましょう。
眼瞼下垂の切開手術は美容?医療?
眼瞼下垂の手術は、目的によって医療上の治療にも美容整形にもなります。
ここでは、保険適用になるケースと自由診療になるケースの違いについて紹介します。
美容目的と医療目的の違いについて
保険診療の眼瞼下垂手術は機能回復を重視し、美容医療は希望通りの見た目に近付ける目的を重視しています。
医療目的の眼瞼下垂手術は、上まぶたが垂れ下がり視界が狭くなっている状態を改善することが主な目的です。
一方、美容目的の手術は「ぱっちりした目にしたい」「二重の幅を変えたい」といった外見上の改善が主な目的になることが多いです。
眼瞼下垂の切開手術を受けた場合、結果的に二重まぶたになる可能性もありますが、保険診療ではあくまで機能改善の治療として行われるため、二重の幅・形を希望通りにデザインすることはできません。
保険が適用される場合がある
眼瞼下垂の切開手術は、一定の条件を満たせば健康保険が適用されます。
具体的には以下のような条件です。
- 医師の診察で眼瞼下垂症と診断されている
- 上まぶたが垂れて目を開けにくい
- 日常生活に支障をきたしている
- 視野が狭くなっている など
一般的に、中等度~重度の眼瞼下垂が保険適用の対象で、視野に影響のない軽度の眼瞼下垂は保険適用になりにくい傾向があります。いずれにせよ医師の診断が必要なため、まぶたに異変を感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。
保険適用のために必要な診断内容とは
保険を使って眼瞼下垂手術を受けるためには、医師による正式な診断が必要です。
診断基準としては、前述したような視野障害や筋力低下の有無などに加え、ほかの疾患が原因かどうかの確認も行われます。例えば、重症筋無力症や神経麻痺などはまぶたの下垂を引き起こす全身疾患です。
保険適用で手術を受けるためにはさまざまな医学的基準を満たす必要があるため、自己判断ではなく、必ず医療機関で専門医の診断を受けてください。
同じ切開でも自由診療になるケース
同じようにまぶたを切開して筋肉を調整する手術でも、状況によっては自由診療(全額自費)扱いになるケースがあります。
例えば、以下のようなケースが該当することが多いです。
- 他院で行った眼瞼下垂手術の再手術
- 仕上がりの幅や形に強いこだわりがある
このような場合、自由診療を案内されるケースがあります。手術歴や美容的要望によっては、同じ「切開による眼瞼下垂手術」でも保険が使えず自己負担になる可能性がある点に注意しましょう。
眼瞼下垂の切開手術にかかる費用の目安
実際に眼瞼下垂の手術を受ける際、費用がどのくらいになるかは保険適用か自由診療かで差が生まれます。
ここでは、保険診療の場合と自由診療の場合それぞれの費用目安や費用の内訳、追加費用などについて紹介します。
保険適用の手術費用
保険診療で眼瞼下垂手術を行う場合、自己負担額は3割負担の場合で片目あたり2~3万円、両目で4~5万円前後が一般的な目安です。
参考までに、当院の眼瞼下垂手術の費用(保険適用)を以下に紹介します。
| 範囲 | 負担割合1割 | 負担割合3割 |
|---|---|---|
| 両目 | 16,000円 | 48,000円 |
| 片目 | 9,000円 | 27,000円 |
医療機関によっては症状の程度や術式によって多少前後することはご了承ください。
保険適用の場合、初診料や検査料、手術費・投薬費なども含めて健康保険でカバーされるため、トータルの自己負担は比較的抑えられます。
自由診療の手術費用
自由診療で眼瞼下垂の切開手術を受ける場合、費用はクリニックによって設定が異なりますが、両目で20万~50万円程度が一般的な目安となります。症例の難易度や有名クリニックかどうかで価格帯に差がありますが、保険適用時の数倍の費用がかかる点に注意が必要です。
参考までに、以下に当院の自由診療における費用をご紹介します。
| 範囲 | 手術法 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 両目 | 挙筋前転法 | 550,000円 |
| 両目 | 重瞼線皮膚切除 | 330,000円 |
医療機関ごとの料金プランによっては、局所麻酔や薬代・検査代が含まれる場合と別料金の場合があるため、事前に見積もりを確認しておきましょう。
費用に含まれる内容は?
手術費用の内訳は保険診療と自由診療で異なります。
保険診療では診察料・検査料・手術料・薬代など必要な医療行為はすべて含まれ、公的保険により自己負担は1~3割です。
一方、自由診療の場合は前述の通りクリニックごとに料金設定が異なり、手術代以外にカウンセリング料や検査料、薬代などが別途かかることもあります。
例えば、局所麻酔代は手術料金に含まれることが多い一方、笑気麻酔や術前の血液検査などは有料オプションとして設定されている場合もあるため、確認をおすすめします。
再手術や修正手術での追加費用
眼瞼下垂手術後に左右差の調整など修正手術が必要になるケースもありますが、その際の費用は状況によって異なります。
保険診療で手術を受けた場合、機能上必要と認められれば修正も保険適用で行えることが多いです。
一方、自由診療で受けた場合は、基本的に再手術も自費負担です。ただし多くの美容クリニックでは、術後一定期間内の修正は無料(または割引)で対応する保証制度を設けているため、先に相談しておくとよいでしょう。
眼瞼の下垂切開手術のダウンタイムと回復の経過
眼瞼下垂の切開手術を受けた後には、一定期間のダウンタイムが生じます。
ここでは、ダウンタイム中に現れる主な症状の経過や、日常生活での注意点について紹介します。
腫れや内出血が出る時期や状態
切開手術の後はまぶたに腫れが生じ、手術翌日~2日目頃に腫れのピークを迎えます。
その後は日ごとに落ち着いていき、通常1~2週間程度で大きな腫れはほぼ引いていきます。内出血(青あざ)が出る場合もありますが、こちらも1~2週間で目立たなくなるでしょう。
個人差はありますが、1か月も経てば傷跡の赤みもほとんど分からなくなることが多いです。
抜糸までの期間と注意点
まぶたの縫合糸は術後5~7日目を目安に抜糸します。
抜糸までの間は傷口が完全に閉じていないため、患部を清潔に保ち、刺激を与えないよう注意が必要です。激しい運動や長時間の入浴など血行を促進する行為は控え、処方された薬や軟膏がある場合は指示通り使用しましょう。
メイク・洗顔・入浴について
術後の洗顔・洗髪は基本的に手術翌日から可能ですが、傷口を擦らないよう優しく行ってください。
入浴は術後3日目から許可される場合が多いです。
また、アイメイクは抜糸が終わってから再開するのが原則で、目元のメイクは通常術後1~2週間程度控えるようすすめられます。
異変があればすぐにクリニックへご相談ください
ダウンタイム中は多少の腫れ・痛み・違和感が生じますが、もしも明らかに強い痛みが続いたり、傷口から膿や出血が増えてきたりなどの症状を感じた場合、すぐに手術を受けた医療機関に連絡しましょう。
感染症の兆候や血腫の可能性もあるため、自己判断ではなく、専門医の判断を仰ぐことが大切です。不安な点があれば些細なことでも遠慮せずに相談しましょう。
まとめ
眼瞼下垂の切開手術は、垂れ下がったまぶたを根本から治療し、狭くなった視界や肩こり・頭痛といった症状を改善できる有効な方法です。
医師の診断で症状が認められれば健康保険が適用され、両目でも自己負担5万円前後で受けられますが、見た目の改善を目指す場合は自由診療になり、費用も高額になります。医師に相談した上で、症状や目的に合わせた方法を選択しましょう。
医療法人まぶたラボ ひふみるクリニックでは、保険適用・自由診療の切開手術に幅広く対応し、さまざまな患者様にご相談いただけます。眼瞼下垂の手術経験が豊富な形成専門医の院長をはじめ、スタッフ一同が患者様の悩みに寄り添い、適切な治療法を提案しています。
眼瞼下垂の症状でお悩みの方や、「これは保険適用なのか自由診療なのか」と迷っている方は、当院までお気軽にご相談ください。


