
まぶたが下がって視界が狭くなる眼瞼下垂(がんけんかすい)は、一度の手術で改善できるケースが多い疾患です。
しかし、まれに手術後に症状が十分改善しなかったり、時間経過とともにまぶたが再び下がってきたりする場合もあり、再手術を検討することがあるでしょう。再手術を考えるのであれば、再手術が適している症状やタイミング、費用などをあらかじめ把握しておくと、判断しやすくなります。
この記事では、眼瞼下垂手術の基本と再手術が必要となるケース、再手術の適切なタイミングや注意点、費用や保険適用の条件などについて紹介します。再手術を検討中の方や「手術してもまた下がるの?」と疑問を持つ方は、ぜひ参考にしてください。
眼瞼下垂手術と再手術の基本
眼瞼下垂とは上まぶたを持ち上げる筋肉が弱くなり、目が十分に開かなくなる状態です。
ここでは、眼瞼下垂の原因と主な症状や、再手術の必要性などについて紹介します。
眼瞼下垂の原因と症状
眼瞼下垂症の主な原因には先天性(生まれつき)を始め、後天的な複数のものが挙げられます。
後天的な原因としては、事故などによる外傷、加齢による筋力低下や皮膚のたるみなどの老化現象、ハードコンタクトレンズの長期使用や過去のまぶたの手術歴などです。いずれの原因でも、上まぶたを持ち上げる挙筋腱膜が伸びたり外れたりすることでまぶたが下がります。
症状としては以下のようなものが代表的です。
- まぶたが重くて開けづらい
- 視界が狭くなる
- 表情が眠そうな印象になる
- 左右の目の大きさが異なって見える など
このほか二次的な症状として、額の筋肉(前頭筋)を酷使して眉を上げないと視界を確保しづらくなり、慢性的な額のシワや頭痛・肩こりにつながることもあります。
一次手術(初回手術)の目的
眼瞼下垂の初回手術は、機能面の改善を第一の目的にします。具体的には、視野の確保や目の保護といった、実用面の問題を解消することです。
健康保険が適用される手術では、美容的な部分よりも垂れ下がった瞼を上げて視界を広げる機能改善が重視されます。一方、自費診療(美容目的)の場合、仕上がりの美しさにも配慮されるため、患者さんが術後に「こうなりたい」と考えている姿に近付きやすいです。
どちらの場合も、手術では伸びたり外れてしまった挙筋腱膜を正常な位置に再固定・短縮して瞼板(まぶたのふちの軟骨)につなぎ直す方法が一般的です。適切に行われれば目の開きが改善して視野が広がり、日常生活での支障を軽減しやすくなります。
再手術が必要になる主なケース
初回手術で十分な結果が得られなかった場合、再手術(修正手術)が検討されるケースもあります。
主な状況としては以下のようなものがあります。
| 状況 | 症状 |
|---|---|
| 症状が改善していない・再発した |
・まぶたの開きが悪い ・手術から約半年~1年で元の状態に戻ってしまった など |
| まぶたの左右差が大きい |
・二重のラインの高さが左右で違う ・片目だけ十分に開いていない など |
| 眼の開き方が不自然・術前より悪化 |
・瞼の動きがスムーズではない ・瞬きをする際に不自然さを感じる ・上まぶたが引き上げられすぎている など |
| 傷跡や二重ラインの乱れが気になる |
・手術の傷跡が目立つ ・二重のラインが複数できてしまった ・二重の幅が広がりすぎた など |
このような状態が明らかな場合、眼瞼下垂の再手術を検討するタイミングの可能性があります。
改めて受診し、医師と再手術の可能性について相談してください。
再手術の難易度やリスク
眼瞼下垂の再手術は、初回手術に比べて傷跡や癒着の影響が気になることもあり、比較的難易度が高いとされています。
手術では傷跡や癒着を慎重に剥離しながら、本来の位置に筋肉や腱膜を戻す必要があります。再手術では出血や感染のリスクがやや高く、術後の腫れも長引く傾向です。
希望通りの仕上がりにならない可能性もあるため、専門医とよく相談し、再手術の難しさについて理解した上で判断しましょう。
眼瞼下垂の再発率・再手術率
眼瞼下垂は手術後も再発する可能性があります。
例えば2021年には、切開による一般的な術式である挙筋腱膜前転法(LAA)では術後の再発率が4.2%、再手術率が2.0%と報告された例がありました。
再発の原因として考えられるのは、加齢による筋力低下や皮膚のたるみ、日常的なまぶたへの負担(ハードコンタクトレンズの長期使用や目をこする習慣など)が多いです。手術効果を長持ちさせるためには、術後もまぶたに無理な負担をかけず、日常生活でのケアを続けることが大切です。
眼瞼下垂再手術が必要なサインとタイミング
眼瞼下垂の再手術が必要になる場合、具体的にはどのようなサインがあるのでしょうか。
ここでは、眼瞼下垂再手術が必要なサインとタイミングについて紹介します。
症状が残る・悪化した場合のサイン
術後もまぶたの開きが悪い、視野が狭い、手術前よりもまぶたが開かないなどの症状が続く場合は、再手術を検討する重要なサインです。
特に、術後しばらく経っても額の筋肉を使って眉を上げなければ視界が確保できない場合は、挙筋腱膜の再固定が不十分だった可能性があります。早めに医師の診察を受け、原因を明らかにしたほうがよいでしょう。
また、術後に頭痛や肩こりといった症状が引き続き出ている場合も、眼瞼下垂の改善が不十分な恐れがあります。
まぶたの左右差や傷跡・ラインの乱れ
左右のまぶたの開き具合が揃っていない、二重のラインが乱れている、手術の傷跡が目立つといった見た目の異常も再手術を検討するサインです。
左右差や二重ラインの乱れは、本人だけではなく他人からも不自然に映りやすく、精神的なストレスの原因にもなりかねません。
このような美容的な問題については、保険診療では再手術が難しい場合もあるため、気になる場合は担当医や専門医に相談し、必要に応じて美容外科的な修正も視野に入れることが大切です。
そのほかの確認ポイント
術後にはドライアイや視野の変化にも注意が必要です。
特に以下のような症状に注目しましょう。
- まばたきしても目の乾きが強い
- まぶたが閉じ切れない
- 就寝中に目が乾燥する など
このような場合はまぶたを持ち上げすぎてしまう「過矯正」の可能性があるため、調整が必要な症状です。また、術後も視界が狭い、見え方に違和感があるといった症状も放置せず医師に相談しましょう。強い痛みや腫れが引かない、傷口から出血や膿みが出る場合も早めの受診が重要です。
再手術の適切な時期と診断の流れ
再手術のタイミングは、一般的に初回手術から3~6か月程度経過した時期が目安とされています。これは手術後しばらくはまぶたの腫れ・内出血・瘢痕の硬さが残っており、速やかに再手術しても正確な修正が難しいためです。
例外的に、術後のごく早期(2週間以内)での微調整が可能なケースもあります。例えば以下のような状態があれば、早急な再手術が必要です。
- 片目だけ糸が外れてしまった
- 明らかな左右差が生じている など
このような場合の早期対応は、元の手術を手がけた医師がもっとも状況を把握しているため、まずは執刀医に相談してください。
眼瞼下垂再手術の注意点
実際に再手術を受けることになった場合、どのような点に注意するべきでしょうか。
ここでは、眼瞼下垂の再手術や術後の注意点について紹介します。
再手術で発生する可能性のある合併症やリスク
眼瞼下垂の再手術でも、出血や感染、傷跡の盛り上がり、麻酔によるアレルギーといった基本的なリスクは初回手術と同様です。
そのほか、改めて以下のようなリスクについて考えておきましょう。
- 希望通りに瞼が上がらない、または上がりすぎる
- 左右差や二重幅の不均一
- 上まぶたのしびれ など
また、再手術では術野の癒着や瘢痕の影響で出血や腫れが強く長引く傾向があり、むくみが数か月続くこともあります。ドライアイや一時的な視力低下が生じる場合もあるため、リスクを十分理解した上で再手術を受けましょう。
術後のダウンタイムや日常生活の注意点
眼瞼下垂の再手術後は、腫れや内出血が強く出ることが多く、初回手術よりもダウンタイムが長引く場合があります。抜糸後も人によっては2週間程度、腫れやアザが残ることがあり、重要な予定がある場合は余裕を持った日程調整が必要です。
術後はアイシングや点眼薬の使用、清潔保持を意識したり、長風呂や激しい運動、目をこする行為は避けたりするなどの注意をしてください。
コンタクトレンズの再開やパソコン作業は医師の指示を守り、生活面での工夫も取り入れて、早めの回復を目指しましょう。
医師との連携・アフターケア
再手術では、医師との信頼関係と適切なアフターケアも重要です。
手術前にはリスクや仕上がりについて十分な説明を受け、不明点は納得できるまで相談しましょう。
術後も医師の指示通りに定期的な診察を受け、腫れや左右差などの経過を確認します。違和感や不安があれば、些細なことでも医師に伝え、早期に対策を講じることで良好な結果につなげやすくなります。
術後に注意したい症状と医師への相談タイミング
眼瞼下垂の再手術後は、ドライアイや視界の異常、傷口の赤みや腫れ、膿が出るなどの症状に注意が必要です。
また、術後数か月経ってもまぶたの左右差や開きの違和感が残る場合も放置せず医師に相談し、必要な処置や再調整を検討することが大切です。
些細な変化も自己判断せず、異常があれば速やかに受診することで重大なトラブルを予防しやすくなります。
眼瞼下垂再手術の費用相場や確認ポイント
眼瞼下垂の再手術を考える際、費用面や保険適用が気になる人も多いでしょう。
ここでは、眼瞼下垂の再手術に必要な費用や、健康保険・生命保険との関わりなどについて紹介します。
再手術費用の相場
眼瞼下垂の再手術費用は、保険診療の場合と自由診療、手術法、医療機関ごとの方針で異なります。
例として、以下に当院医療法人まぶたラボ ひふみるクリニックの費用目安(税込)を紹介します。
【保険診療】
| 範囲 | 負担割合1割 | 負担割合3割 |
|---|---|---|
| 両目 | 16,000円 | 48,000円 |
| 片目 | 9,000円 | 27,000円 |
【自由診療】
| 範囲 | 手術法 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 両目 | 挙筋前転法 | 550,000円 |
| 両目 | 重瞼線皮膚切除 | 330,000円 |
※片目のみの場合、両目費用の6割です。
このほか、他院での手術を再手術する場合、医療機関や症状によって違いはありますが、約40万円になるケースもあります。
また、健康保険の適用で手術した場合、契約内容によっては手術給付金の対象となる場合がありますが、自由診療は対象外となることが一般的です。契約内容によって条件が異なるため、事前にご自身の保険の適用範囲を必ず確認してください。
保険が適用される条件と自由診療の違い
眼瞼下垂の手術が健康保険適用になるのは、医師が機能的な改善が必要な病的状態と診断した場合です。
具体的には以下のような点がチェックされます。
- 視野が狭くなっている
- まぶたの開きが基準値以下
- 頭痛や肩こり など
美容目的だけの場合は保険適用外です。再手術でも前回が美容目的の場合は原則自費ですが、症状が明らかに悪化していれば保険で治療できる場合もあるため、医師に確認しましょう。
再手術相談時に確認したいポイント
眼瞼下垂の再手術を相談する際は、前回の手術に関する情報を整理しておくと役立ちます。
特に、他院で行った眼瞼下垂手術の再手術を希望する場合には、医師に可能な限り詳しい情報を渡すとよいでしょう。
具体的には以下の情報がおすすめです。
- 手術内容
- 術式(手術方法)
- 手術日
- クリニック名 など
また、再手術を依頼するクリニックの実績や専門性も事前に確認しましょう。カウンセリング時には費用、アフターケア、保険金の請求手続き、保証や再々手術への対応まで細かく質問しておくとトラブルを防ぎやすくなります。
トラブル回避のために心がけたいこと
眼瞼下垂の再手術を避けるためには、最初の手術で信頼できる医師や適切な術式を選び、術後のケアも積極的に行うことが重要です。
術前に自分の希望を十分に伝え、術後のケアも以下のような点を心がけましょう。
- まぶたをこすらない
- ハードコンタクトの使用を控える
- 過度なアイメイクを避ける など
このような生活習慣が、眼瞼下垂の進行を遅らせ、再手術の可能性を軽減します。
異常を感じた場合は早めに受診し、定期検診も怠らないようにしてください。再手術が必要だと感じた場合も医師に相談し、正確な診断と説明を受けましょう。
まとめ
眼瞼下垂の再手術は、初回手術後の症状の再発や改善不足、見た目の違和感、左右差、強い腫れや合併症など、さまざまな理由で必要になることがあります。
再手術は初回より難易度が高くなりやすく、専門医による丁寧な診察と説明を受けた上で決定しましょう。相談やカウンセリングの段階から疑問や不安は遠慮なく伝え、術後も医師の指示に従い、異変や気になる点があれば早めに相談してください。
医療法人まぶたラボ ひふみるクリニックでは、眼瞼下垂の再手術についてご相談いただけます。保険適用、自費診療の双方に対応しているため、医療・美容のどちらにも対応可能です。眼瞼下垂でお悩みの方、再手術を迷っている方は、一度当院へご相談ください。


