
まぶたが重く感じたり、目が開けづらいと感じたら、それは眼瞼下垂かもしれません。
眼瞼下垂はまぶたを持ち上げる筋肉の働きが弱くなり、まぶたが垂れ下がってしまう状態を指します。症状が進行すると、見た目の変化だけでなく視野が狭くなる、頭痛や肩こりといった不調の原因にもなります。
眼瞼下垂は、保険適用で手術が受けられることもありますが、見た目の改善が目的の場合は自由診療になることもあります。
この記事では、眼瞼下垂の症状や手術の保険適用条件、保険診療と自由診療の違い、具体的な手術方法と費用相場について詳しく解説します。
眼瞼下垂とは?
眼瞼下垂とは、まぶたが正常な位置よりも下がってしまい、黒目に覆いかぶさっている状態を指します。
見た目としては、眠そう・目が細く見えるといった印象を与えるだけでなく、視野の一部が遮られることで実際にものが見えづらくなるケースもあります。原因はさまざまで、生まれつきまぶたを持ち上げる筋肉の機能が弱い先天性眼瞼下垂や、加齢や生活習慣によって筋肉や腱膜がゆるむ後天性眼瞼下垂もあります。
また、皮膚のたるみによって、見かけ上、まぶたが下がっている偽眼瞼下垂と呼ばれる症状もあるため、医師による正確な診断が必要です。眼瞼下垂は、見た目の変化にとどまらず、見え方や身体の不調にもつながるため、正確な診断と適切な治療が重要です。
症状と原因
眼瞼下垂の主な症状には以下のようなものがあります。
- まぶたが重く、目を開けにくい
- 額や眉に力を入れるため、額のしわが深くなる
- 視野が狭くなり、特に上方向が見づらい
- 眠そうと言われるなど、表情に影響が出る
- 頭痛や肩こり、首凝りなどの不快な随伴症状
- 慢性的なだるさや倦怠感、集中力の低下など
これらの症状は、まぶたが下がってしまうことによるもの、または、まぶたを無理に持ち上げようと額や首の筋肉を使い続けることで引き起こされるものです。場合によっては、姿勢が悪くなったり、自律神経が乱れてめまいや不眠を引き起こす場合もあります。
眼瞼下垂の原因の主なものは加齢ですが、ハードコンタクトレンズの長期使用や目を触る癖、アイメイクの刺激などもまぶたを下げる要因になります。若年層でも発症する場合もあるため、年齢にかかわらず注意が必要です。
手術になるのはどんな時?
眼瞼下垂は保険適用と自由診療の治療があります。
保険適用の手術の対象となるかどうかは、見た目の問題だけでなく、機能的な障害があるかどうかが大きな判断基準です。
皮膚のたるみが原因で症状が軽度の場合は、すぐに手術にはならないケースもあります。眼瞼下垂の診断は専門的な視点が求められるため、まずは医療機関を受診し、原因と症状の程度を正確に把握することが大切です。
眼瞼下垂の手術に保険適用される条件
眼瞼下垂の手術には、保険診療と自由診療の二つの区分があります。
自由診療は費用が全額自費負担となり、高額になるケースがほとんどです。健康保険が適用されるかどうかは、機能的な障害があるかどうか、治癒の必要性が医師により認められるかどうかが主な判断基準です。
機能障害があるか
眼瞼下垂により、視界が狭くなったり、目を開けるために常に額や眉に力を入れてしまったりする状態は機能障害と判断されます。
一般的に、次のような症状が確認されれば、保険適用の対象となることがあります。
- まぶたが黒目の中心にかかっている
- 視界の上側が見えにくい、視野が狭い
- 額や眉に力を入れないと目が開かない
- 眼瞼下垂による慢性的な肩こり・頭痛、姿勢の悪化
特に、まぶたのふちが黒目の中心より下がっている(2.0mm以下)と診断されると保険診療の対象となることが少なくありません。
医師の判断で治療が必要とされた場合
眼瞼下垂が軽度であっても、医師が機能的な問題があると判断した場合には、保険適用になる可能性があります。
例えば、以下のようなケースの場合です。
- 目の開きが悪く、見えにくさを日常的に感じている
- 額や首の筋肉を過剰に使うことで不調が出ている
- 視野はある程度保たれているが、疲れやすく生活に支障がある
- 仕事や運転などに支障が出ている
また、先天性眼瞼下垂などで視覚の発達に悪影響を与えると判断される場合や、事故・怪我などの外傷による眼瞼下垂に関しても、治療の一環として保険が適用されます。
ただし、保険適用されるかどうかは医師の診断に左右されるため、気になる場合は問診・カウンセリングの際に相談しましょう。
見た目の改善のみは保険適用外
二重の幅を広げたい、目の見た目を変えたいという美容目的のみの手術は保険適用外になります。
二重の左右差を整えたいだけのケースや、仕上がりのデザインに強いこだわりがある場合も自由診療になることが多いでしょう。
保険診療では、基本的に瞼を開けやすくし、日常生活に支障が出ないようにする最低限の治療を行うため、仕上がりの見た目を細かくデザインすることは難しいケースが多いです。美容面も含めて理想の仕上がりを求める方は、自由診療での手術が適しています。
眼瞼下垂手術の保険診療と自由診療の違い
眼瞼下垂手術を検討している方の中には、保険診療と自由診療にはどのような違いがあるのかが気になるという方もいるかもしれません。
眼瞼下垂手術の保険適用と自由診療は、どちらを選ぶかによって、費用、治療内容、仕上がりの自由度などの違いがあります。ここでは、それぞれの特徴を解説します。
費用
保険診療では、医師の判断に基づき、眼瞼下垂と判断された場合には保険が適用されます。
保険が適用された場合は費用の一部が補助され、自己負担は一般的に3割(年齢などにより2割や1割の場合もある)です。
保険適用の眼瞼下垂手術の費用は以下の通りです。
| 3割負担 | 1割負担 | |
|---|---|---|
| 片目 | 27,000円 | 9,000円 |
| 両目 | 48,000円 | 16,000円 |
採血や笑気麻酔を使用する場合はその部分のみ自費となるケースや、診断・検査費用は別の場合もあるため、治療を受ける医療機関で相談しましょう。
一方、自由診療は全額自己負担となります。手術費用は施術内容やクリニックにより大きく異なりますが、一般的には30~70万円程度の幅があります。
審美性やデザイン性にこだわる施術になるほど、費用は高くなる傾向にあるため、事前にクリニックで費用について相談することをおすすめします。
治療内容
保険診療の眼瞼下垂手術は、視野障害や眼精疲労といった機能の改善が目的です。
代表的な術式には、挙筋前転法や挙筋短縮法などがあり、主にまぶたを開きやすくするための構造的な調整を行います。術式は、医師が診断に基づいて適切なものを選択します。
自由診療の眼瞼下垂手術では、機能改善に加えて、美容的・審美的な要素が重視されます。希望に応じて二重幅を細かく調整したり、まぶた全体の印象を整えたりすることも可能です。
術式の選定も医師との相談によって決定され、より個別性の高い治療が可能になります。
デザインや仕上がり
見た目の仕上がりにおいて重要視する方は、自由診療を選ぶことをおすすめします。
保険診療では、自然な見た目を損なわないように配慮されますが、目的はあくまで正常なまぶたの機能回復です。希望する二重幅やまぶたの形が審美性が高いと判断される場合、自由診療を勧められる場合があります。
眼瞼下垂の手術が保険適用される診療科
眼瞼下垂の治療は、眼科・形成外科・美容外科などで行われていますが、保険適用の手術を受けたいと考えた際に、どの診療科で治療を受ければいいのか迷う方も少なくありません。
保険診療が受けられる診療科の選択は、診断の精度や適切な手術に関わる重要なポイントです。
ここでは、保険適用となる眼瞼下垂手術を受ける診療科について詳しく紹介します。
眼科か形成外科が基本
保険適用で眼瞼下垂手術を受ける場合、まず受診するのは眼科または形成外科です。これらはともに眼瞼下垂の診断・治療に対応しており、視野障害や眼精疲労といった機能的な問題があるかどうかを医学的に判断します。
眼科では、視野検査や角膜の状態の確認など、目の機能に関わる検査が充実しており、保険適用の判断材料を評価します。
一方、形成外科は、上記のような診断とともに、外科的手法に長けているため、手術の精度や仕上がりに配慮した施術が期待できる診療科です。
眼瞼下垂は形成外科の専門領域
眼瞼下垂は、まぶたの構造的な問題に起因するため、形成外科の専門分野に含まれます。
特に眼瞼挙筋のゆるみや、筋力低下を調整する手術には、皮膚・筋肉・脂肪などの理解が不可欠であり、形成外科はそのような構造的手術を専門に扱っています。
眼瞼下垂手術は、術後の左右差や不自然な形状を避けるための工夫や、術中の適切な判断も求められますが、形成外科ではそのような点にも十分配慮した手術が行われます。ただし、どの診療科であっても、見た目の改善のみを目的とした治療は自由診療となります。
美容外科でも保険は適用されるか
美容外科でも、医師が医学的に眼瞼下垂と診断し、視野障害などの機能的な問題が確認された場合には、保険が適用となります。
ただし、美容外科では多くの場合、見た目の美しさや理想の二重幅を重視した治療が主になり、希望によっては保険診療の範囲を超える治療となり、自由診療となるケースがあります。
軽度の眼瞼下垂だが、見た目を優先したいという方が美容外科を選ぶ場合、視野障害の有無に関係なく自由診療での手術となります。自由診療での手術は、保険診療よりも高額となるため、事前に費用の説明はしっかりと受けましょう。
保険適用される眼瞼下垂手術の種類
眼瞼下垂の手術には複数の方法があり、症状や原因に応じて医師が選択します。
これらの手術は医師の診断により保険適用となり、日帰りで受けられるのが一般的です。ここでは、代表的な手術法について解説します。
挙筋前転法
まぶたを開ける筋肉である眼瞼挙筋の腱膜がゆるみ、まぶたが下がる症状に対して行われる標準的な手術です。
まぶたを切開し、ゆるんだ腱膜を縫合し直すことでまぶたの開きを改善します。軽〜中程度の眼瞼下垂に広く用いられます。
挙筋短縮法
重度の眼瞼下垂に対して適用される手術法で、眼瞼挙筋自体が伸びてしまっている場合に有効です。
筋肉を短縮して固定することで、まぶたの持ち上げ機能を回復させます。挙筋前転法と同様に切開操作が必要なため、術後の腫れには配慮が必要です。
上眼瞼切開法(皮膚切除)
まぶたの皮膚がたるみ、その重みでまぶたが下がっているケースでは、まぶたの皮膚を切除することで症状の改善を図ります。
この手術は、加齢による眼瞼下垂に多く見られ、術後の腫れが比較的少ないのが特徴です。
筋膜移植法(前頭筋吊り上げ術)
眼瞼挙筋の働きが著しく低下している場合や、ほぼ機能していない場合に行われます。
患者さん自身の太ももの筋膜などを用い、まぶたと額の前頭筋を連結させることで額の筋力でまぶたを引き上げます。
眉下切開
眉のすぐ下を切開して、たるんだ皮膚を取り除く手術です。
まぶた本体には直接手を加えないため、自然な印象を保ちつつ、皮膚の重みによる下垂を改善できます。医師の判断により、眼瞼挙筋前転法を行い筋力を高めてから、眉下切開を行う場合もあります。
まとめ
眼瞼下垂は、単なる加齢や見た目の変化にとどまらず、視界や日常生活に支障をきたすこともある病気です。
機能的な障害があると診断されれば、保険適用の手術も可能ですが、仕上がりのデザインや左右差へのこだわりが強い場合は、自由診療が選ばれることもあります。自分に適した治療法を選ぶためにも、信頼できる医師の判断を仰ぐことが大切です。
『ひふみるクリニック』では、豊富な手術経験を持つ形成外科専門医が、常に技術を磨きながら、自然な仕上がりを目指した施術を行っています。
患者さんとのコミュニケーションを重要視しているため、仕上がり、手術に関する不安や、費用についても気になることがあれば、ご相談いただければ真摯に回答します。眼瞼下垂の手術を検討している方は、ぜひ『ひふみるクリニック』にご相談ください。


